エリック・A・ポスターとE・グレン・ワイルの共著、「ラディカルマーケット」はめちゃ面白い。同著のアイディアのひとつ「共同所有自己申告税」(COST)について簡単に千文字で魅力を伝えてみるよ。うまくいけば、大きすぎる経済格差を解消して、社会全体の成長につながるかもしれないアイディアだ。興味をもってくれたらうれしいです。
私有財産権は成長を停滞させている
- 高額な資産(特に土地や建物)を持つ人々が、それを活用せずに保有し続けるだけで経済全体の生産性を低下させている
- 例えば、新しいビジネスを始めたいのに、必要な資源(例:土地や建物)が既に占有されていて利用できないなど
- 資本主義経済の私有財産制度は、実は成長を停滞させている
- 超裕福層の増加は全体の成長の足枷になっているとも言える
- 私有財産を制限して、もっと流動性を上げ、必要な資産が必要な人に行き渡たるようにできれば社会は成長できる
そもそも私有財産権は
- 私有財産権は歴史的に固定された権利ではなく、その時代の社会や経済に合わせて変化してきたもの
- 中世では王や貴族が土地を独占していたが、新興の市民階層がこれを奪い取り、現代では国家が全ての資産を管理する社会主義制度まで進んだこともあった
- どんな体制でも、資産の流動性が低いと社会の成長が停滞することが歴史的に証明されている
- 現在我々が当たり前だと受け入れている私有財産権も未来に向けていずれ進化する
COSTのユニークさと可能性
- 共同所有自己申告税(COST=Common Ownership Self-Assessed Tax)の基本ルールは3つ
- 資産の価値を所有者自身が申告する
- 申告した価値に基づいて一定の税率で課税される
- 他の人が申告した価値でその資産を購入したい場合、所有者はそれを売却しなければならない
- 税率の調整によって配分効率性と投資効率性をいい感じにバランスできる
- 高い税率のとき:資産を流動化し休眠資産を減少させ、社会全体で最も有効な形で活用することができる(配分効率性が向上する)、一方、所有者が資産を大切にする動機は低下し、資産は荒廃する
- 低い税率のとき:所有者が資産をケアし、価値を高める努力に集中できるが(投資効率性が向上する)、一方、資産の固定化が進み、社会全体の成長は鈍化する
- COSTの面白さは、私有財産を事実上の「共同所有」に近づけ、新しい経済成長の可能性を作り出す点
現実社会での導入可能性
と、ここまでCOSTの魅力を簡単にまとめてみたが、伝えられたかな?
面白そうだからやってみたらいいんじゃないの?これを実現するには?小規模な実験的導入などどうか。「COST特区」として過疎地や大規模災害の被災地など、流動性の向上が必要な地域から始めるなどよいのではと思ったりした次第。